はじめに
人間栄養学部人間栄養学科実践応用栄養学研究室(担当教員:加藤理津子)では、2022(令和4)年度から
千代田区内を舞台にSDGsをテーマにした社会活動を行っています。
3年目となる今回は、大学4年生3名が牛乳をテーマにSDGsランチおよび食育プログラムの開発を行い、
社会実装しました。2024(令和6)年度の活動レポートをぜひご覧ください。
今回のレポートにより「SDGs活動にかかわってみたい!」、「SDGs活動をする仲間を増やしたい!」と
思っていただけましたら幸いです。
牛乳とSDGs
皆さんは、牛乳を毎日飲んでいますか?
今、日本における酪農は深刻な問題を抱えています。
「牛乳の大量廃棄」が問題となったことは記憶に新しいかと思います。この背景に牛乳の生産量と消費量のアンバランスによって起こる「需給ギャップ」があります。
新型コロナウィルス感染症流行により牛乳の消費量が減少し、その結果、需給ギャップが起こり年間約5,000トンもの牛乳が廃棄されました(朝日新聞デジタル 2022.1.15)。
また、学校給食が休みになる夏期や冬期にも牛乳の消費量が減少するため需給ギャップが起こります。
では、生産量を減らせばいいのでしょうか?
それは簡単なことではありません。
なぜなら牛は搾乳を毎日欠かさず行わないと病気にかかってしまいます。また、生き物である牛の頭数をコントロールすることは簡単ではありません。それに、今度は大量生産したいとなった時にもすぐには対応できなくなります。
令和5年度の牛乳・乳製品の自給率の数値は63%ですが、飼料の自給率を考慮すると28%にまで下がります(独立行政法人 農畜産業振興機構)。また、暑さに弱い牛のために夏は冷房設備が必要です。牛乳廃棄に加え、輸入飼料や冷房にかかる燃料費の高騰は酪農経営に大きな負担となっており、廃業する酪農家も増えています。
日本人は、将来的に貴重なたんぱく源やカルシウム源を失うことになるかもしれません。
牛乳を取り巻くフードロス、食料供給、健康、産業といった課題はSDGsに関連しています。
日本における“持続可能な酪農”を実現するためには、国の取り組みとともに私たち消費者も協力することが必要です。
牛乳をテーマにしたSDGsランチの開発
■牛乳の栄養
私たちが牛乳を消費することは、日本の酪農を支えるだけでなく私たちの健康にも利益をもたらします。
牛乳・乳製品に多く含まれるカルシウムは、人の体の骨格となるだけでなく、血液中に存在して血液の凝固など様々な働きをしています。
日本人のカルシウム摂取量(令和元年 国民健康栄養調査)は、全ての年代で推奨量(日本人の食事摂取基準(2020年版))を充足できていません。
普通牛乳100gあたりに含まれるカルシウムは110mg (八訂食品成分表)ですので、毎日あと1~4杯分の牛乳を摂取することが奨められます。

■SDGsミルクプリンの開発と販売
6月の「牛乳月間」、「食育月間」にあわせ、和の食材と組み合わせたミルクプリンを開発し、本学の千代田三番町キャンパスで開催されたローズ祭(2024.6.16)で販売しました。

購入者のほとんどの方から「おいしい」との感想をいただき、和の食材を取り入れた牛乳製品への興味・関心が高く好評でした。また、購入する場合には「SDGsに役立つなら選ぶ」よりも「SDGsに関係なく選ぶ」とのご意見が多かったです。
■SDGsランチの開発と販売
牛乳が持つ特性、泡立つ、酸を加えると分離するなどを活かしてメニューを考案することとしました。
日比谷パレス(千代田区日比谷公園1-6)の小林シェフをお招きして料理指導も受けました。

完成したメニューは、2024年9月1日~31日まで日比谷パレスで販売しました。牛乳の新しい魅力が伝わるメニューを提供できたと思います。

学生にとっては新しい挑戦でとても苦労していましたが、小林シェフから「これでいい」ではなく「これがいい」と自信を持って提案できるまで探究、探求することの大切さを教わりました。これから管理栄養士として社会に出る学生にとって学びの多い貴重な経験となりました。
牛乳をテーマにした食育
若い世代に牛乳の廃棄問題解決に貢献する意欲を持ち、また解決する方法を考える力を身につけてもらうために、高校2年生の生徒を対象に食育を行いました。会場は、大学の調理実習室です。生徒の皆さんにはヘアキャップ、マスク、エプロンを身につけ、靴にはシューズカバーを装着していただきました。
初めに学生が牛乳の廃棄問題の現状だけでなく、牛乳に含まれる栄養素や料理について講義した後、グループに分かれ、高校生にも「牛乳廃棄を減らすために自分たちにできること」を考えてもらいました。

さらに牛乳を使った調理実習をしました。
温めた牛乳にレモン汁を加えると、ホエイと呼ばれる液体と固形分に分けることができます。
今回、ホエイを使ってパンケーキを作り、固形分をトッピングして試食してもらいました。



まとめ
商品や授業を通して、牛乳の活用方法など身近な内容については興味関心を得られやすいですが、SDGsや牛乳廃棄等の大きな課題については意識を高めてもらうことが難しいと感じました。これは牛乳廃棄が自分たちの生活にどのように関わってくるのかといった説明が足りなかったため、身近に感じられなかったことが要因と考えられました。今後は、自然とSDGsに参加できる機会や商品の提供を通し、貢献度を見える化することで取り組む人を多くすることも必要であると考えました。
この場をお借りして、お力を貸してくださった皆さまに心より御礼申し上げます。
【牛乳をテーマにしたSDGsランチの開発と食育】