株式会社花省「四季の行事を彩る花と料理」編
- 花
「四季の行事を彩る花と料理」編
私たちが目指す管理栄養士には、和食文化を継承していくことで、人々の健康増進を目指し、生活を豊かなものにすることが求められています。しかし、忙しい現代人は継承すべき和食文化の特徴である「自然や季節を表現すること」や「年中行事を行うこと」が少なくなってきています。そこで、私たちは四季の特徴を表すお花を用いて、人々に季節や年中行事を生活に取り入れてもらうために、「四季の行事を彩る花と料理」というテーマを設定しました。
私たちがテーマを設定する中で生まれた疑問を、東京家政学院大学の近くにある花省さんにお尋ねし、食卓に彩りをプラスするフラワーアレンジメントを体験してきました。
花省さんは1920年に開店した100年の歴史あるフラワーショップです。
お花はどこから仕入れていますか。
お花の流通については、市場によってそれぞれ得意分野があるため太田、葛西、世田谷の3つの市場から厳選された花を使用しています。例えば、太田市場は、全ての果物やお花が一番集まる市場です。葛西は、菊や仏花が得意です。世田谷は、切り花がメインであります。このように得意不得意があるため、様々なルートを使って花を仕入れているそうです。
なぜ、お花を行事や料理に取り入れているのでしょうか。
日本人が季節を一番身近に感じるのがお花です。例えば、お店に行かなくても道を歩いているだけでお庭にバラが咲いていたり、アジサイが咲いていたりすることで一番身近にお花が目立ち、季節を感じやすいと思います。もちろん気温、気候というのもありますが、一番私たちが生活している中で、つい目に入るところがお花だと思います。そして、料理に用いられる食材にも旬というものがあります。お花と料理がセットになることで季節をより感じることができるからです。太田市場は、食べ物とお花の市場が隣り合わせになり販売されています。それぐらい、お花と料理にはずっと昔から日本人が一緒に楽しみ、季節を感じるものとしては、一番身近なものかもしれないですね。
- 花省さんの今岡さんにインタビュー
行事によってお花の飾り方は違うと思いますが、お花屋さんが行事の花を飾るうえで意識していることはありますか。
行事で、意識していることは、行事の時のお花というのは、その行事が主役であり、お花はあくまでも脇役です。だから、その行事を邪魔しないようにしています。例えば、結婚式に使うお花にはほとんどの花に香りがないです。なぜかというと、香りがあるとお料理の香りの邪魔になるからです。そして、昔からそうだと思いますが、お料理にところにつけたりする紅葉も香りがないものを選んでいます。ブーケも主役ではなく、花嫁の装飾ですね。例えば、ひな祭りもひな壇があって、そこに飾るお花ということで、お花を飾ったり、お月見のススキとかお団子とかも、月があってこそなので、すべてお花というのはただ何かの行事に対しての、装飾という考えです。
行事によって置く花の見せ方を教えてください。
行事によって、それぞれ意味もあると思いますが、私はどこから花瓶に入れた花、アレンジした花を見るのかも行事によっては大切だと思います。例えば、ひな祭りの時はお花を、ひな壇の上の方に飾るので花瓶に入れて下にみんな集まって眺め、お月見の時、高く上った月にススキがかかるように写真を撮る方が多いので、そういう面では、どこから見るかを大切にしています。
- 熊手を使ったアレンジメント
お花が一番売れる時期を教えてください。
ブライダルが専門の私たちは少し特殊で、結婚式の人気の時期である秋(10月、11月)がピークです。その次に暖かくなってきた春(3月、4月)に行われる結婚式の時期です(下写真)。一般的なお花屋さんは、クリスマスやお正月(12月、1月)です。次に卒業式、入学式、入社式がある春(3月、4月)です。
- プリザーブドフラワーのアレンジメント
- 結婚式で利用されるフラワーアレンジメント
お花屋さんを経営するうえで大変なことを教えてください。
それは、良い品物を仕入れることです。鮮度のいいお花がなかったら売ることができないのでこれが一番ですね。
- 店内で販売されている花
- 店内で販売されている花
お客様の現代のお花に対する意識はどのように変化していると思いますか。
昔、お花は「華やかに道」と書いて華道といい、お花というのは文化でした。なので、お坊さん等の位が高い人が作法として、お花を文化として楽しんでいました。40年ぐらい前にお稽古ごと、習いごとのように、文化から「作法」になったと思います。
そして、現代は「身近なもの」ですよね。現代はなぜかそばにあって心地いいものという感じの方がみなさん強いかな思いとます。華道やお稽古で習いに行く、そういうことより道を歩いていてお花屋さんがあってきれいだなと少し心が洗われるような想いを持ってくださいます。今はお花が生活の「環境の一部」になったかなと思います。
どんどんより身近に近づいてきているというのが不思議ですよね。昔の方がたぶん自然の生息地にあったのですが、今は反対で、花の流通が発達したため、逆にこう私たちにとってお花は身近なものに。誰でも買って飾ることができるものになったと思います。
男性の方もお花を購入されますか?
個人的に普通にお花を自分でデスクに飾りたい、お家に飾りたいという男性が7割近くいます。小さい鉢植えを出すと、ほぼ男の方が購入します。それはもう若い方とか関係ないです。小学生ぐらいからほんとにお年寄りの方までいますが、若い男性の方が多いです。そして、様々な年代の方がお花を購入しにお店に来ると、お花を見ることで心が優しくなっているのかなと思います。ここに来る方は皆さん優しくて、「あっ、心が優しい、綺麗な人たちだな。」とうれしくなります。
お花屋さんを営んでいて、こうなっていったらいいなということはありますか
お花は店内を見てもらえばわかると思いますが、様々な種類があります。お花は、今生活の一つの環境となって、身近になっていますよね。一期一会ではないですけれど、お花との出会いがあります。例えば、切り花を買って、枯らさないように水をあげる、または、鉢植えを買い、育っていくのを楽しみに待っている等の気持ちですよね。
さっきのお花を買いに来る男性のように、優しい気持ちを多くのみなさんに持ってほしいなって思います。お花に触れていくと、どんどん優しい気持ちになっていくので、そういう風に今まで買ったことのない人も買ってみたり、もらったお花を飾ってほしいです。今、いろんなことがあって気持ちがくすみがちですけども、花屋としては少しでも優しい気持ちになって頂けるといいなと思います。
インタビューの後に、実際にアレンジメントの講座を体験させていただきました。
今回のアレンジメントのテーマは「お正月に飾るアレンジメントをしよう」ということで、正月らしい白と赤のフラワーピック、花の飾り物(柳をイメージ)、オンシジウム(黄色の細かいラン)、デンファレ(白のらん)、スプレーマム(小さな黄色のまんまるの真花)、ヒペリカム(赤い実)を使いアレンジメントを体験しました。
- 今回アレンジメントで使用した材料
アレンジメントのポイント
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Point 1
玄関に置いたり、テーブルに置いたりする場合は、目線の高さできれいに見えるように作る。
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Point 2
お花の最大の高さは器に対して3~4倍くらいまでにする。
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Point 3
ヒペリカムを、長さを考えながら手前の方にさし、それを基準にして、どこから見るのかを決める。
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Point 4
そのあと全体の高さを決めるために先ほど刺した花(③)の後ろにオンシジウムをさす。
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Point 5
全体的に見てかたちが三角になるように、デンファレ、スプレーマムをさす。
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Point 6
フラワーピックや花の飾り物は三つの花で作った三角形の間を埋めるようにさす。
- アレンジメントの説明を受けている最中
説明を受けた後アドバイスをいただきながら、アレンジメントをしました。
時間をかけて配置を決め、バランスを見ながらお花の長さを整えました。
完成したアレンジメント
初めてのアレンジメントでしたが、満足のいく作品になりました。誰でも簡単に作れるので、お花を買ってみてアレンジメントをし、食卓に飾ってみてはいかがでしょうか。
最後に
今回、お花は私たちの生活の中でより身近なものになっており、人々に癒しを与え、見ただけで季節を感じさせてくれるものであるということを学びました。近年、お花は日持ちするものが開発され、身近に取り入れやすくなっています。みなさんもぜひ日常にお花を取り入れ、身近に季節を感じてみてください。特に、食卓で飾るお花は、匂いがなく、料理が主役になるように飾ることができます。お花を少し置くだけで、食卓の雰囲気が良くなり、行事の雰囲気をより感じることができます。
アレンジメントが完成した時は、きれいにお花を生けることができ、とてもうれしかったです。今回、アレンジメントを体験したことにより、自分でできるほど手軽に考えていいものだということを学びました。これを生かし、食事に色を添えるためにアレンジメントをしたお花を飾ることで、喫食者の方に季節を味わっていただき、食事の時間が癒しになるような雰囲気が作れる管理栄養士になりたいです。
- おせち料理に門松を添えた配膳
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食についての取材の中では「花」は副題ですが、皆さんとても熱心に取材されて、生花アレンジ作成の際は真剣に取り組まれる姿にとても感銘を受けました。私にとっても楽しい時間をありがとうございました。