TOKYO KASEI GAKUIN UNIVERSITY presents
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神田淡平 / 天野屋「地元に愛される老舗せんべい」編

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神田淡平 / 天野屋
「地元に愛される老舗せんべい」編
神田・秋葉原・御茶ノ水
地元に愛される老舗せんべい

突然ですが、皆さんは老舗と聞いてどのようなことを思い浮かべますか? 歴史?伝統?町を歩いていると「創業〇〇年」なんて看板を目にすることもありますよね。 千代田区内にはそんな老舗がたくさん存在します。
今回、東京家政学院大学の4年生が、千代田区内の老舗、神田にあるせんべい専門店「神田淡平」と、糀と糀で作った味噌や甘酒が看板商品の「天野屋」、2つのお店とタッグを組んで味噌せんべいを開発しました。
そこで、私たち1年生が、「神田淡平」の鈴木社長と開発に携わった本学4年生にお話を伺いました! 「長年地域に愛され続ける秘訣って何だろう…?」「老舗との商品開発って…?」本稿ではこれらのことを中心に皆さんにお伝えしていこうと思います。

※神田淡平さんと天野屋さんの詳しい情報については先輩方の過去の記事をご覧ください 。

神田淡平さん↓
https://tabechiyoda.com/report/kandaawahei/

天野屋さん↓
https://tabechiyoda.com/report/amanoya/

  • 神田淡平さんの外観
  • 天野屋さんの外観

淡平さんのこだわりを聞いてみた

「神田淡平」さんは、明治17年創業の老舗せんべい屋です。
そこで、社長の鈴木さんに、老舗ならではのこだわりについていくつか質問をしてみました!

  • Q.

    せんべいを作るにあたって、一番大事にしていることは何ですか?

  • A.

    一番大切にしていることは老舗であることに恥じないように、長い伝統に準ずるような商品開発をすること。老舗の商品は、商品自体が文化財。だからこそ美味しければよいというわけではなく、地域の歴史や文化、その地域に住む人々の意思に寄り添い、地域と共にあるのが老舗の商品。極端なことを言えば、美味しさなんて関係ないんだよ。一番大事なことは、食べた人に「やっぱり、この味だ」と思わせること。
    もちろんおいしさも大切だけどね(笑)

食べ物屋さんにおいて、美味しさより大事なことがあるということに驚きです!永くその地域にある老舗だからこそ、何でもありではなく、地域に愛され続け、求められ続ける努力を怠ってはいけないのですね。

  • Q.

    日常生活の中では商品を作る上で、どのようにアイデアを見つけていますか?

  • A.

    日常生活の中で、常にアンテナを張ることを「捨て目がキク」という。
    具体的なエピソードを話すと…、僕が昔に体を壊して散歩していたとき、川の土手に何か落ちているのを見つけて、「なぜこんなところにこんなものが落ちているんだろう」と疑問に思ったことがあった。そこで、知人に聞いてみると、昔、その地域で作られていたものだったということを教えてもらった。そのうち興味がわいて、それを作っていたお宅を訪ねてみると、見つけたものは昔使われていたせんべいのコテで、昔に捨てたものが落ちていたことが分かった。そこから生まれたのが、江戸時代のせんべいの味を再現した「今戸焼」という商品です。

  • 今戸焼のコテ
  • 今戸焼きせんべい

「捨て目をきかせる」ことによって、こんな素敵な出会いもあるんですね。
また、鈴木さんは葛飾区の文化財保護推進委員や、地域のフードフェスタに参加したり、学校の先生と交流したりしているそうです。自分と違う意見の人と交流したり、一見せんべい作りとは関係のない活動にも参加したりすることによって新しい発見や出会いがあり、それが商品開発に生かされていると感じました。
私たち管理栄養士を目指す学生にとっても、レシピ開発などのヒントを見つけるために「捨て目をきかせる」ことや色々な活動に参加することが必要だと思いました。

商品開発への道のりを先輩方に聞いてみた!

  • 試作中の様子
  • 神田淡平さんへの商品企画説明の様子
  • 天野屋さんへのインタビューの様子

先輩方に商品開発への道のりを取材しました。

  • Q.

    商品開発を行うにあたって大変だったことは何ですか?

  • A.

    2人で合計7つほどアイデアを用意しました。最初は1枚のせんべいに2つの味を乗っけるような無茶なアイデアとか出てきたりして(笑)。最終的には2つまでに絞ったけど、採用されたのは1つだけ。
    でも商品開発で新しいものを考え、それがだんだん形になっていく過程は楽しかった。

実際に私たちも職人さんや先輩方に取材をした内容を記事にまとめていますが、何も知らない状態から様々なことを知れて、記事として出来上がっていく過程は達成感があります。その気持ちを先輩方の経験と重ね合わせることによって、商品開発の醍醐味を疑似体験できています。

  • Q.

    試作はどのくらいしましたか?

  • A.

    期間としては二ヵ月くらい。各自、家で味付けの試作を2~3回、それをもとに大学で3回くらい。
    味付けは先生に試食してもらって、前に作ったものと比較して決めた。

商品開発をするにあたって、試作は欠かせないものです。
先生方の厳しい味覚の審査のもとクリアした商品ですが、神田淡平さんをうならせるのは大変難しかったという裏話も聞けました。
今回コラボした「天野屋さんの江戸味噌」の味を最大限に生かした上で、老舗の神田淡平さんらしいせんべいを作ることは並大抵のことではないと感じました。

  • 完成したコラボせんべい

このようにアイデアの時点から何度も選考を繰り返すことで、商品は出来上がります。
こちらが淡平さんと先輩方で作った「天野屋さんの江戸味噌を使ったせんべい」です。

中学生がグルメレポーター!?

なんと、先輩方が商品開発したせんべいを東京家政学院中学校の生徒約60人に試食してもらい、フードライターになったつもりで食レポをしてもらうイベントも開催しました!

~香り~

・味噌の香り漂う
・味噌が香ばしい

~味~

・故郷を思い出すような懐かしい味
・後味抜群
・味噌の味が生かされている

~食感~

・食べた瞬間から味噌のうまみとせんべいのカリッとした食感がよく合う
・歯ごたえがある

~その他~

・家にあったらたくさん食べられる
・手ごろな大きさ
・こんがり焼けたおいしそうなせんべい
・袋から出した時の香りと食べた時の味が違ってとてもおいしい

生徒の食レポから、先輩と神田淡平さん、天野屋さんの江戸味噌せんべいは、中学生にも大好評だったことが分かります。
私たちもせんべいを試食しましたが、味噌のまろやかな風味とパリッとした食感がとてもあう、どこか懐かしい味のせんべいでとてもおいしかったです。

また、中学生たちに商品のイメージをイラスト化してもらいました。その中から学院内のコンテストで選ばれた5名のイラストとたべチヨダのロゴをプリントしたエコバッグを制作しました。
こちらの写真は完成品です。千代田区らしい花の絵と先輩方が開発した商品のイメージが合わさって、とてもかわいらしいバッグになりましたね!
このエコバッグを2022年2月に天野屋さんをはじめ、今回の企画にご協力いただいた各店舗でお客様に無料配布しました。

  • 天野屋さんで飾られている様子
  • 宝来屋さんで飾られている様子

皆さんからのメッセージ~管理栄養士の卵へ~

〇先輩方のお話を通して

商品開発を通して、先輩方から沢山の素晴らしいメッセージをいただくことが出来ました。
やはり何度もお話されたことは「沢山話し合いをすること」でした。
商品開発では、個人の発想力があったとしても、ちゃんと人に伝えることが出来なければ、商品を作る際に違った物ができてしまったりします。また、作る前の段階でも話し合いが足りないと、方向性の違いの原因にもなります。しかし、話し合いをすることで、今自分が迷っていても、周りの人が助け舟をくれることもあります。沢山話し合った結果、得することはあっても損することはないと感じました。

そして、一番私たち自身が勉強になったと思うことは、「自分の考えているプランを分かりやすく伝えること」でした。自分の考えていることが上手く伝わらなければ、食い違いや話の進捗状況が変わってきます。管理栄養士は人に伝える場面が多くあるので、相手に分かりやすく説明するスキルはとても大切で必要だと思いました。

このようなことから、沢山話し合いをし、自分の考えているプランを分かりやすく伝えることは、今後管理栄養士を目指す上で大切にしたいことだと思いました。

〇淡平さんからいただいたメッセージ~食に関わっていくうえで大事なこと~

次に、淡平さんから食に関わっていくうえで大事なことを教えていただきました。

「料理の勉強も大事だけど、いろんな文化の勉強や地域の勉強はとても大事。何もしがらみがなく、自由に商品を作るのはある意味面白いかもしれない。だけど、その地域に愛され続け、支持されるためにはいろんな文化の勉強や地域の勉強は絶対にしといたほうがいいし、それが商品に必ず生きてくる」

将来管理栄養士として献立作成や商品開発などに関わる際は、喫食者のニーズに応えるためにも、その地域の文化や歴史を勉強すべきなのですね。そうすることで、より喫食者に寄り添った食事提供が可能になり、栄養管理の質が向上するのではないかと考えます。

最後に

今回の活動を通して、コラボ商品を作り出すという普段見れないような裏方の話を聞けたのは、本当に貴重な体験だと思いました。なによりも先輩方が楽しそうに商品開発をしている姿を見て、ますます私達も「商品開発をやりたい!」という気持ちになりました。また、淡平さんが地域に愛されつづけている理由は、地域の人と交流したり、地域のイベントに参加することによって地域の歴史について学び、地域に寄り添いながら、求められ続けるための商品開発や商品販売を行っているからではないでしょうか。

美味しさだけを追及するのではなく、対象者に合わせた味付けや献立内容を考えることはとても大事なことであると、取材を通して心に刻むことができました。

取材先
神田淡平
住所 〒101-0047 東京都千代田区内神田2-13-1
TEL 03-3256-1038
HP http://www.awahei.com/
天野屋
住所 〒101-0021 東京都千代田区外神田2-18-15
TEL 03-3251-7911
HP http://www.amanoya.jp/

※おすすめの一品紹介
甘酒(温) 400円/杯